アルベール・カミュ「転落・追放と王国」を佐藤朔・窪田啓作訳新潮文庫(1968)版で読む。カミュ晩年の2作品。晩年と言ってもこの人は46歳の若さで亡くなっているが。では、順番に読んでいく。
転落(La Chute)1956
パリで弁護士をしていたというクラマンス氏の告白。アムステルダムのバー「メキシコ・シティー」で客を相手に独白。
この人の話が何も面白くないw たぶんちょっと頭おかしい。人間の虚栄とか偽善性とかを自身の経験談に基づいてとめどなく吐き出すように一方的に喋る。相手が聴いてるのか読者はよくわからない。
語り口がドストエフスキーのよう。ひたすら止まない。破戒坊主の辻説法のよう。何か人生の真理のようなものと持論を勝手に展開。自分は読んでいてかなり困惑した。小説というより哲学エッセイのようなもの。きっと読む人によっては心に響く。
追放と王国(L'Exil et le Royaume)1957
6篇の物語によって「人間の疎外」を描く短篇集。正直どれもが読みにくい。
- 不貞 すでに冷め切った夫婦の行商旅行の場面。
- 背教者 異教徒が殺される場面。
- 啞者 小さな工場でのストライキの場面。
- 客 小学校教師がアラブ人殺人犯を預けられる話。
- ヨナ 画家とその家族の風景。
- 生い出ずる石 ブラジル熱帯地方の工事現場。
読んでいてまるで頭に入ってこない。それはたぶん日本人にはなじみのない風景ばかりなのと比喩表現。しかも短編は状況がわかる前に読み終わってしまう。
おそらく日本人読者に一番響くのは「客」じゃないかと思う。これは状況がわかりやすいし場面が眼に浮かぶ。
老憲兵が殺人犯を連れてきて一晩泊めて翌日送り届けるという命令を受ける。主人公教師がちょい反抗的。金と食料を渡して、警察署へ行く道と逃げる道を教える。最後のアラブ人の行動が「なぜ?」と思わないではいられないが。
あとは「背教者」と「啞者」が短編小説として印象的。
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