アガサ・クリスティー「アクナーテン」(1973)を中村妙子訳2004年クリスティー文庫版で読む。古代エジプト第十八王朝の王アメンヘテプ四世(アクナーテン)の宗教改革とその妻ネフェルティティのドラマ戯曲。私的クリスティマラソン82冊目。
AKHNATON by Agatha Christie 1973
王の病気を治すためにシリアからイシュタール女神像がアメンに運ばれてくるシーンから始まる。シリア人たちを見た市井の人々の反応「外国人っていやね」。これはそのまま英国の保守層を風刺揶揄?
続いて大神官とその息子軍人ホルエムヘブのふたりが会話でエジプトの国情を説明。「王子の挙動がおかしい」「気がふれているのかもしれない…」
ティイ王妃と王子アクナーテンがシリアからの一行に謁見。その場でホムエルヘブはアクナーテンと初対面。
王子と軍人はまったく話がかみあわないのだが、王子から友人になってくれるよう頼まれる。王子の夢は戦争のない世界。
そして王の死。新王アクナーテンは政治に無関心。アメンの神よりもラー・アテンの神と新首都建設にご執心。そして妻ネフェルティティがすべて。この王妃は5人の子を生むのだがまだ男子を生んでいない。
娘の婚約者にツタンカーテンという少年が出てくる。どうやら後のツタンカーメンらしい。
周辺国との外交問題、そしてアメンの町での一揆。アクナーテンはアテン神以外の神を禁止する急速な宗教改革でさらに敵をつくる。ホルエムヘブが諫めるのも聴かず。国か国王か?アメンの神官たち、ネフェルティティの姉ネゼムート、そしてホムエルヘブの決断。
全3幕とエピローグ。芸術に打ち込み、外交と軍事をないがしろにし、治安を悪化させ、誰も求めていない宗教改革で孤立した狂王の悲劇的末路。
クリスティ女史はこの作品を気に入っていたらしい。シェイクスピアを意識した史実ではない創作エジプト史劇。登場人物たちが現代的で合理的で言う事が平易。中学生でも理解が容易。
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