大岡昇平「事件」を読む。初めて単行本化されたのは昭和52年だが、1961年から62年にかけて、朝日新聞夕刊に「若草物語」というタイトルで270回にわたって連載されていたもの。15年後に刑事裁判の諸制度を踏まえてようやく本になった作品。
昭和30年代の神奈川県の架空の郡にある架空の町で起こった、飲み屋を経営する女性が妹の交際相手少年(19)に刺殺され、殺人と死体遺棄に問われた事件の裁判経過を描いた司法フィクション小説。
これが読み始めてすぐに後悔したw 事件自体が作者の創作なのに、細部がやたらと細かい。弁護士や判事の経歴だとか、性格だとか、出世したかどうかとか、日本の司法制度の戦前との比較、欧米の司法制度との比較、関係者の心理や傾向、学説、司法はどうあるべきか?などなど、どうでもいいことでひたすらページ数を稼いでいる。ウンザリ。
松川事件裁判や狭山事件裁判によって、世間が想ってる裁判はアメリカのドラマのような劇的な物でなく、実際はこんな地味なものですよ…と、関心の高い人に向けて、インテリ作家が「教えてやろう」というような本。
呆れた。令和の今ではもうほとんど読む価値を失っているのでは?と思いつつ、読むペースを上げながら、いちおう最後まで読んだ。
普通の小説に最低限あるような隠された劇的な真相すらもない。徹底リアル法廷小説が面白くないという好例。連載時に真面目に読んでいた人はほとんどいなかったと思われる。
自分にはクリスティの「検察側の証人」程度のもので十分。「リーガル・ハイ」で十分。
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