2021年7月7日水曜日

大江健三郎「万延元年のフットボール」(昭和46年)

大江健三郎「万延元年のフットボール」(昭和46年)を1988年講談社文芸文庫版で読む。

自分、高校1年のときこれを読んでみたことがある。まったく太刀打ちできなかった。何を書いてあるのかぜんぜんイメージできなかった。今ならわかるかもと手にとった。

タイトルから判断すると、江戸時代の人々が楽しくサッカーでもしてそうなイメージ。だがそれはまったくの見当違い。
とにかく文体が東大仏文科を出た秀才が書くようなもの。なぜにそれほどわかりにくい?多くの事を語っているようでいて状況が見えてこない。何度も同じ箇所を読まないといけない。困惑。

激しく頭をフル回転させながら文字を追う。ぼんやりとした状況がだんだんはっきりしてくる。主人公は27歳青年密三郎。精神を病んで首を縊った友人のことを考える。アメリカへ劇団員として渡ってどこかへ逃げた弟の鷹四について考える。戦地から生きて戻った兄は朝鮮人部落で殴り殺された。酒に酔う妻、知的障害を持って生まれた幼い息子。

病気の犬を抱いて水に浸かった穴にいる意味がわからない。たぶん主人公もかなり心を病んでる。

アメリカから帰国した鷹四とその子分、アル中妻と四国の郷里へ車で帰省。急に村での暮らしになる。万延元年に百姓一揆で襲撃された大きな家。
食欲が抑えられず太った女、子どもたち、養鶏をやってる朝鮮人部落、殺された兄の話、蔵を売る話、村でフットボールチームを作る弟、人命救助、純文学なので致し方ないにしても読んでも読んでも面白くならない。相変わらずわかりづらい。

真ん中あたりまで読んだ段階で耐えきれず、一旦巻末の解説を読んだ。大江健三郎は愛媛県の交通の不便な山間の村出身。クソ田舎のクソ高校に耐えられず四国全体でも名門の松山東高へ転校。そして東大へ進み小説を書く。映画監督伊丹万作の娘と結婚。そして脳に障害のある息子が生まれる。この「万延元年」という小説は大江の田舎と家族と村人を描いた小説?

鷹四は谷間のフットボールチームと村人に朝鮮人が経営するスーパーマーケットで略奪をさせたり、蜜三郎の妻と姦通したり、強姦殺人の告白だったり、妹の自殺の原因の告白だったり、何が何だか破滅的行動の末に自殺。

地下倉から万延の一揆の曽祖父の弟の秘密を知ったり、突然アフリカでの就職が決まったり。「で?」っていう他人の身の上話を聴かされるほどキツいことはない。意味のわからない映画を1本見たような感じ。

最後まで読み通すことが苦行だった。読後に満足感よりも、やっと解放された…という思いが強い。
大江は「死者の奢り・飼育」では「さすが!」「天才!」と思ったけど、この長編を読んで、もう読む必要ないな…とすら思った。

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