このころ、新人でありながらいきなり話題作の主演級キャストに抜擢されるなど成海璃子は時代のニューカマーだった。
そして、AKB48が大ブレイクするよりはるか以前の前田敦子も重要なキャストで出演していた。声がまるで子どもだが、女優前田敦子の素質はこのころから輝き始めていた。
だが、成海と前田のふたりが出演していたということ以外、どんなストーリーだったのかはまるで覚えていない。たぶん、小学生から中学生にかけての女子たちの狭い内輪だけで展開するストーリー。原作は真戸香「あしたの私のつくり方」(講談社)。脚本は細谷まどか。
成海はイジメなんかのある小学校のクラスをぼんやりながめている。で、家族で私立中学校入試に挑戦。入試まで1週間学校を休む。父(石原良純)と母(石原真理子)と娘、3人で面接とか想像しただけで身の毛がよだつストレスシーン。この両親はすでに関係が冷え切ってるのに面接では良い家庭を装う。
で、受験に失敗し、またも夜は両親が怒鳴り合い。娘、ため息。この石原良純がモノマネネタの石原良純そのものなしゃべりと声質。
1週間ぶりに教室に行ってみると、クラスの人気者だった前田敦子が女子の反感を買い孤立していた。
そして、暗くてイジメに遭っていたあの子(柳英里沙、この人も30歳になった現在も女優として活動中)が自分の落ちた私立中学に合格していた。ああ、嫌だこういうの。この映画はそういう嫌な感じを味わう映画。そうだっけ?
小学校の卒業の日、成海と前田は図書室でふたりきりで自分たちの境遇をしみじみ会話。この二人の顔立ちはまるで別人種のように違う。
中学に上がるとふたりはそれ以来とくに話をすることもない。そんな関係。周囲に合わせて上手く立ち回る成海、やっぱり孤立する前田。やっぱり怒鳴り合う両親。中2で両親は離婚。やっぱり娘はため息。暗い顔。
母とふたりの新生活。高校へ電車で通学。成海は文芸部に所属。高校の教室でもあのイジメられてた前田敦子の噂話が聴こえてくる。これも勝手な推測を交えた悪意のある女子たちの茶飲み話。成海は前田のメアドを聞き出す。この時代のJKはガラケーメール時代。
文芸部の先生が高岡蒼甫。ヒロインに小説を書くアドバイスをする。もうずいぶん長い間この人を見てないな。俳優業を引退してしまったようだ。
月に一度パパと会う。母には「ママと会うほうが楽しい」とか言って気を遣う。またため息。思い返されるのは日南子(前田敦子)の言葉。「お前は嘘が上手いから行いだけでも良くなさい」(by 太宰治)
ヒロインは山梨に転校するという日南子に初めて匿名でメールしてみる。「あなたは誰?」「私はあなたの友だちです」ふたりの交流が再開するのだが、日南子は迷惑がる。いいかげんにしてよ!ヒロインは日南子をモデルにヒナという人物を創出し小説を書き送る。
この小説で転校生最初の挨拶時にコケるなど、JKの考えそうな寒い笑い要素を盛り込んだ自分を偽るアドバイス書。ヒロインの虚構と現実がシンクロ。遠く離れた場所で同時に展開するふたりのドラマ。ちょっと大人が見るにはつらい展開。
日南子はコトリ(成海)の小説に基づいた行動でクラスの人気者として溶け込む。新天地で楽しいJK生活を送ってるように見える。成海も日々が楽しそう。
そんな日南子は桜田通(こいつはこんな昔から高校生役やってたのか)とデート。コトリの恋愛想定問答に従って行動しアンサー。人に気に入られるために自分を偽って行動するのは苦しい。
ヒロインも母の再婚候補男(田口トモロヲ)と会食させられ、理想の良い娘を演じる。どこでもいつでも演技。
日南子と桜田通は傍目からは上手く行ってるカップルに見える。だが、日南子「あのさ、もう会うのやめよう」ここで物語が初めて暗転。
「途中から気づいていた。こっちに来て変わったつもりだったけど、本当は何も変わってないって」ふたりのやりとりはぷっつり途絶える。日南子はもとの暗い子に戻る。本当の自分って? だが、桜田通の役の子がこどものようでいてしっかりした立派な若者だった。
ヒナとコトリの物語はハッピーエンドとして完成。高校の文芸誌として配布されることになる。書店に行くとかつて同級生だった子(自分が落ちた中学に受かった子)と再会するのだが、ヒロイン家族と入れ替わるように、かつて住んでいた家に住んでいた。自分が失ったものを手に入れてる人がいる。それは、思わず貧血卒倒しかねない嫌な事態だ。
そこに日南子からヒロインに電話がかかってくる。なんでバレた?日奈子は同窓会名簿にかたっぱしから電話してたどりついた。ヒロインは日南子に悩みと思いを一気にぶちまける。
そして、文化祭。ヒロインは学年代表としてスピーチへ。
この映画、市川準が最後に残した正しいアイドル女優映画。成海も前田も後に日本映画とドラマを支える人気女優に成長した。ただ、自分としてはそれほど気に入っていない。メールのやりとり画面とかもあって、「BU・SU」「東京マリーゴールド」みたいな日本映画らしい色合いと味わい深さをそれほど感じない。
中学高校時代を忘れていない女子にはそれなりに共感できる箇所があるかもしれない。だが、そうでない大人には退屈かもしれない。
成海に対して前田の演技に見劣りと熱量の差を感じた人もいたかもしれない。
主題歌はシュノーケル「天気予報」。そういえばシュノーケルっていたなあ。今も活動してるんだろうか。
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