2020年10月20日火曜日

アガサ・クリスティー「牧師館の殺人」(1930)

アガサ・クリスティー「牧師館の殺人」を読む。2年前の秋に100円で見つけて確保しておいた田村隆一訳1978年ハヤカワミステリ文庫版(1997年第22刷)で読む。これがミス・マープル長編第1作。私的クリスティマラソン70冊目。
THE MURDER AT THE VICARAGE by Agatha Christie 1930
セントメアリミード村のクレメント牧師目線で村の人間模様が語られる。他者に辛辣な心の声も書かれてる。牧師館に若い妻グリゼルダと甥のデニス、女中のメアリと暮らしている。

治安判事のプロズロウ大佐は村人から好かれていない。(多くの人が殺害動機を持っている)
娘のレティスは牧師館にアトリエを借りている画家ロレンスと恋仲らしい。レティスの水着姿を描いたりして父は「けしからん」と怒ってる。
だが実は、大佐の若い後妻アンとできているところをクレメント牧師は目撃してしまう。牧師は画家に村を出るように言う。

嘘の村人危篤の電話におびき出され牧師館に戻ってみると、面会の約束のあったプロズロウ大佐が書斎で頭部を撃ち抜かれ殺されている。(誰も銃声を聞いていない)
画家ロレンスは死体発見の直前に牧師館にやって来て2分ほどで帰るところをクレメント牧師に家の前で会い少し話していた。なにやら様子がヘンだ。

ロレンスは警察に出頭し自供。「自分が殺した。」
だが、殺害時刻が村の医師の証言と合わない。ロレンスが殺したという時間より死亡時刻はだいぶ前。
で、今度は殺されたプロズロウ大佐夫人のアンが「自分がやった」と自供。だがこれも否定。

牧師館の隣に住んでるオールドミスがパープル婆さん。主人公の牧師にはこの人が「いじわる婆さん」に見えるらしい。
マープル婆さんはそう見えることを信じない。鋭い観察眼で真の関係が見えている。

これ、ミス・マープル長編第1作なのだが、マープル婆さんはほぼ脇役。クレメント牧師がいろんな話を聴きまわる。牧師という職業上、村人から密告の手紙が来たりする。
だが捜査は進展してるように思えない。これは退屈…。

実はアイツは詐欺師でしたとか、真犯人に犯人にされ殺されそうになったりだとか、それ以外にあまり展開がない。
終盤になってやっとマープル婆さんならではの鋭い視点で意外な事実が明らかに。証拠が何もないのでマープルと刑事は犯人を罠にかける…。

だが、自分としては驚けなかった。この作品は凡庸。クリスティ70冊目ともなると、新鮮さを感じたり驚いたりすることはなかった。

そもそも構成に美しさを感じないしわかりづらかった。会話にあまりユーモアもないし登場キャラにも魅力が乏しい。読後の満足感もそれほどない。
この「牧師館」を褒めている人はたいてい、英国の田舎ステキ!だとか、ミス・マープルのキャラがいい!とかしか見ていないと思う。

この「牧師館の殺人」を読んだことで、未読のミス・マープル長編は「スリーピング・マーダー」の一作のみ。

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