2020年10月14日水曜日

エウリーピデース「バッカイ」(BC.407年ごろ)

エウリーピデース「バッカイ」(BC.407年ごろ)を2013年逸身喜一郎新訳の岩波文庫で読む。

このギリシャ詩人を自分はエウリピデスと覚えていた。ソフォクレス、アイスキュロス、エウリピデスでギリシャ三大悲劇詩人。高校世界史で呪文としてしか覚えなかった名前を、今年になってやっと3人とも読んでみて個性が分かった感じ。

バッカイって何?従来のちくま文庫版では「バッコスの信女たち」という邦題がつけられたりしていた。逸身氏は「バッコスに憑かれた女たち」と改めた。巻末解説でそこを詳しく解説。ギリシャ語のバッカイとバッコスは女性複数形と男性複数形。女性単数形がバッケー。
英語読みがバッカス。酒だけでなく山中を走るランナーズハイも酩酊のうち。ディオニューソスを崇拝し山中を行く女たちがバッカイ。

この悲劇のストーリーをざっくり説明すると、ディオニューソスを神と認めなかったテーバイ王ペンテウスが、ディオニューソスと一体化したような狂信女たちに八つ裂きにされ殺される話。
テーバイで最も理性を持つ暴君が、屈折した性癖を表し、異常な殺され方をするという構図。
テーバイ王ペンテウスの母がアガウエー。アガウエーの父がテーバイの始祖カドモス。母が息子を殺す構図も悲劇。

紀元前5世紀のギリシャ人たちに向けて書かれた戯曲。ペンテウス神話が常識の状態の人々のために書かれた。古代ギリシャで大ディオニューシア祭は重要な儀式。
トラーキア王リュクールゴスもディオニューソスを否認し錯乱し息子を切り刻む。オルフェウス神話にも同じような話がある。そんな伝説を取り込んだ戯曲。見るのもはみんな結末を知っている状態。

そんな知識がないと読んで意味が分からないと思う。神と闘った王の不幸な死も致し方がないという芝居。正直、古代ギリシャに感心が高い人にしかオススメできない一冊。

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