ソポクレス「オイディプス王」を藤沢令夫訳岩波文庫で読む。1967年という古い訳。
文庫本の「オイディプス王」は光文社文庫に新しい訳があるのだが、岩波のほうが安く入手しやすいので。
ソポクレスは前5世紀の古代ギリシャ三大悲劇作家。自分は高校世界史でソフォクレスと覚えていたのだが岩波はソポクレスで統一。
自分が初めて「オイディプス王」を知ったのは大学生のとき、ストラヴィンスキーによるオペラオラトリオ「エディプス王」を聴いて。(こちらはジャン・コクトー台本によるフランス語ナレーターによる解説とラテン語歌唱によるもの)
ソポクレスの「オイディプス王」は読んでも面白い。
「朝は4本脚、昼は2本脚、夜は3本脚、この生き物は何?」という、人類史上最古にしてもっとも有名ななぞなぞ。それを説いてスフィンクスを退治した人物がオイディプス。
スフィンクスというとエジプトのピラミッドの前にあるやつを連想するけど、古代ギリシャでは乙女の顔に翼のあるライオンの胴体をした怪物。
自分、この物語の舞台となってるテバイがどこだか今までまったく知らなかった。今回地図で確認した。テバイとは今のテーベ。
作物は枯れ家畜は倒れ子どもが生まれず疫病に苦しむテバイを救うため、オイディプスは立ち上がる。かつてスフィンクスを倒した自分ならできる!
妻の弟クレオンがデルポイから御託宣を持って戻ってきた。先王ライオスを殺した汚れた者がテバイにいる!こいつを追放しないとテバイは救われない。
よく意味がわからないので盲目の老予言者ティレシアスを呼んでくる。嫌がるティレシアスに無理やり語らせる。「先王を殺したものは王!」
オイディプスはクレオンがティレシアスが申し合わせて謀反を企んでるに違いない!と激怒。そこに妻イオカステがやってきて両者を諫める。
デルポイから来る道とダウリスから来る道とがひとつに合わさるところで、ライオス王の一行は盗賊に殺された。ただひとり生き残った者は羊飼いになっている。とうことを知らされる。
オイディプス「あれ?その昔、自分はそこで高貴な一行を腹立ちまぎれに殺したことあったわ」
そこにコリントスからの使者。ポリュボス王が老衰で亡くなったので、オイディプスに「コリントス王になって」
ポリュボス王の子オイディプスはデルポイの神託で「自分の母親と交わり、人々の正視するに耐えぬ子種をなし、父親の殺害者になるであろう」という予言をされていたため、オイディプスは国を捨てて流浪の旅。そしてスフィンクスを退治しテバイの王妃イオカステの夫となり王となっていた。
使者はオイディプスがポリュボス王の実の子でないことを知っている。というのも、キタイロンの山の中で羊飼いから、両足のくるぶしを留め金で刺し貫ぬかれた子を受け取ったのがこの使者だった。オイディプスのくるぶしにも古い傷がある。オイディプスという名前は「腫足」という意味。
今度は羊飼いの証言。「ライオス王の子は父親の殺害者となる」という神託から、イオカステから託された子を「山の中に殺して捨てるはずだったけど、殺すにしのびなくて羊飼いに渡したったわ」
ここで「ポリュボス王の子」と「ライオス王とイオカステの間に産まれ棄てられた子」が同一人物であることをオイディプスは知る。「それは自分だ!」
知らないほうがよいことを自らずんずん掘り下げる。
実の子を夫としていたことを悟ったイオカステは首を縊って自殺。オイディプスは泣き叫びながらイオカステの衣服の留め金で目を突いてつぶす。目から血を流しながら、クレオンに国と子どもたちのことを頼んだ後に、自らを追放…。という地獄のような悲劇作品。
オイディプスは実の母と交わり子をなしていたことは明らかになった。だが、実の父であるライオス王殺害犯が自分であることは、生き残った羊飼いにもっと詳しく現場の状況を聞かないとわからないのでは?
羊飼いの口から「実は相手はひとりだった」と語らせないと、推理小説、サスペンスとしては完成しない。でもたぶん、そういう読み方をしてはいけないんだと思う。
引き続き岩波文庫でソポクレスを読む。今度は「コロノスのオイディプス」。こいつは紀元前401年に作者の孫によって上演された遺作。
この版は昭和39年筑摩書房「世界古典文学全集」収録の高津春繁訳を使用。1972年に岩波文庫に収録。
娘アンティゴネに手を引かれながら、エウメニデスの神域コロノスの森の中をさ迷い歩く盲人となった老人オイディプスを描く。神に呪われたテーバイのラブダコス王家の人々とオイディプスの最期。
地元民コロス(合唱)やら二人の娘アンティゴネとイスメネとの対話。そしてアッティカの王テセウス、クレオン、息子ポリュネイケスとの対話が続く。そしてオイディプスの冥府への旅立ち…。
この土地のなんらかの伝説が反映された内容なのかもしれないが、ソポクレスの創作?
現代日本人にはよく呑み込めない内容。運命を嘆き息子に怒り娘に感謝。父を殺したのも正当防衛という弁明。そして神の意志に従う…という内容。
自分としてはそれほど感銘は得ることがなかった。
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