2019年11月17日日曜日

新田次郎「陽炎」(昭和37年)

昭和35年~46年に文芸誌に掲載された新田次郎の短編歴史小説を集めた「陽炎」(1981 文春文庫)の1990年第5刷がそこに100円で売られていたので買い求めた。もう1年以上前だ。

この本の存在をまったく知らなかった。収録されている短編すべて初めて目にするもの。
調べてみたら、この本、世間でぜんぜん読まれてないっぽい。新田次郎は誰でも名前を知ってる作家のはずなのに、なぜ?

驚いた。収録されている8本のすべてがミステリー小説っぽい!

ぬけ参り(サンデー毎日 昭和35年6月特別号)
綱吉の時代に京都で爆発的に流行したお伊勢参り。幼いこどもまでもが家を抜け出して伊勢を目指す。その裏に色と欲の情念のドラマ。ちょっと鬱な短編。

筍茶屋(オール読物 昭和45年3月号)
江戸時代、これはという美少年は男色家に小姓(男娼)として高値で売れた。強欲で冷酷なかめという女の経営する陰間茶屋(美少年の性風俗店?)に、失踪した兄に替わってやってきた弟与吉。「兄は殺され埋められている?」隣に住む旗本独身男が真相を暴く!これは完全にサスペンスホラー娯楽短編。

信長の悪夢(オール読物 昭和41年1月号)
信長公記にわずかに記された記事を自由に想像を広げて書いた短編。荒木村重一党の生き残りの僧侶を、地の果てまで追いかけて殺す信長の、執拗で病的な残忍さを描く。

天狗火事(オール読物 昭和34年4月号)
信州での後家殺人放火事件。天狗の火祭りの風評の出所を探るうちに真犯人があぶり出される。

着流し同心(小説新潮 昭和35年12月号)
大名屋敷で起こる盗難事件をさぐる北町奉行所同心駒井鉄之丞が、松平出羽守自慢の人形が盗まれた事件に挑む。まるでシャーロック・ホームズ。名探偵と怪盗の知恵比べ。誰が読んでも楽しい短編ミステリー小説。

流された人形(講談倶楽部 昭和36年8月号)
「着流し同心」の続編。松平出羽守の屋敷から松平宮内少輔の屋敷に移った人形を盗み出そうとする怪盗は鼠小僧だった!そして鼠小僧に味方する謎の浪人。

北条早雲秘録(小説新潮 昭和46年3月号)
国盗人早雲に工作員として利用され棄てられた男の悲哀。

陽炎(別冊小説新潮 昭和37年4月号)
松平大和守の奥での30両盗難事件。奥方と女中たちの心理を描く。

どれも面白い。新田次郎の短編時代小説はどれも絶版?読まれてないのがもったいない。

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