2019年11月23日土曜日

アガサ・クリスティー「秘密機関」(1922)

アガサ・クリスティー「秘密機関」を田村隆一訳1982年ハヤカワ・ミステリ文庫版で読む。クリスティマラソン55冊目。
自分が手に入れたものは1994年第13刷だが、真ん中付近で割れかかってページが落丁しそう。ボンドで接着修理しないといけない。
THE SECRET ADVERSARY by Agatha Christie 1922
物語は1915年、アメリカから英国へ向かうルシタニア号がドイツ潜水艦の攻撃によって沈む場面から始まる。
救命ボートが降ろされようとしているその時、とあるアメリカ人女性が男から政府の機密重要書類を「あなたのほうが生存する確率が高いから」という理由で手渡される。

自分は「二人で探偵を」→「MかNか」→「秘密機関」という順番で読んできたのだが、こいつがトミー&タペンスのベレズフォード夫妻シリーズの第1作。
このときタペンスはまだ牧師の娘ミス・プルーデンス・カウリー。トミーとふたり合わせて年齢45歳にも満たないという若者。

カフェで「金がねえ」など若者らしい会話。第1次大戦直後の英国の若者も現代の日本の若者と同じ。この時代は就職はまず困難。
だが、この二人は「青年冒険家商会」をやろう!という話で盛り上がる。
タペンスはトミーと別れ帰りに紳士から呼び止められる。仕事を持ちかけられるのだが、トミーからたまたま聞いた「ジェーン・フィン」名前を出した瞬間に相手の顔が変わる。そしてスパイと陰謀の世界に巻き込まれる。

トミーは尾行中に行方不明。タペンスは怪しい女のアパートに女中として潜入。ジェーンのいとこハーシャイマー氏、王室顧問弁護士ジェームズ卿らと協力してトミーの行方を追う。

この時代の英国スパイ小説の敵はドイツ人、ロシア人、アイルランド独立派。こいつらが英国の安定を脅かす。外交機密文書をめぐるスパイミステリーって英国の伝統?

「秘密機関」は事前に評判が良いと聞いていたのだが、自分としてはもうベタな古典という評価以上のものはない。ラストの真実開陳は2段構えどんでんがえしで長くてテンポ悪い。
中盤で多くの読者が謎の黒幕ブラウン氏の正体を2人のうちのどちらかだと気づくので、だいたい想像がつく。

キューティー探偵トミー&タペンスの恋愛要素が楽しいかもしれないけど、そんなに感心もしなかった。

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