2019年9月10日火曜日

中島敦「李陵・山月記」

中島敦「李陵・山月記」を読む。
自分、高校時代に現国で中島敦を学んだような気もするのだが、当時はまったく授業など聴いておらず覚えてもいない。こんな漢文のような文章は読む気にもならない。中国古代史にも古典にも詳しくない。

中島敦(1909-1942)はわずか33歳の短い命だったため、著作の多くは青空文庫で読めるのだが、自分は紙でしか読書をする習慣がない。とりあえず自分と合う作家なのか不明だったので、もっとも手に入りやすい新潮文庫版を選んだ。
中島敦は全著作も数が知れている。いずれちくま文庫あたりで読破に挑むかもしれない。

まず絶筆となった李陵(昭和18年)から読んでいく。
前漢の武帝の時代、寡兵を率いてオルドスへ征討に向かう李陵が主人公。単于率いる匈奴との戦争を描いている。
これが格調高く緊張感のある文体。

歩兵のみの李陵に対して騎兵の匈奴との圧倒的軍事力格差(ロジスティクスも存在しない)で刀折れ矢も尽き、あとは斬り死にしかない…という事態に。
通信将校を都へ送ったあとに捕虜となってしまった李陵。武帝とその佞臣たちは李陵一族の処分を検討。

そこに太史令・司馬遷が登場し李陵をかばう。もともと少ない兵力で期待してなかったし、それでいて十分な戦果を挙げたし、捕虜になったのもなにか策があるのでは?
だが、司馬遷は宮刑(去勢)に遭う。中島敦による司馬遷の仕事の評価と評論のページが続く。

李陵は蘇武に会い動揺。投降し胡人として生きる自分に比して、長年抑留されて屈しない蘇武。祖国と敵国の狭間で、ふたりの軍人の運命と壮大な物語。内省的で深みも感じる大傑作。
中島敦の年齢でこれほど深い物語を書けた力量と素養に感心するし絶望する。

「山月記」詩人になるつもりが、気づいたら醜く恐ろしい人食い虎になっていた男の慟哭。
「名人伝」弓の名人になるべく修行してたら、弓が何かもわからなくなった男の話。シュールすぎ。オリンピックのアーチェリーに弓と矢を持たないで出場し優勝するような話。名人を極めすぎたバットマンが「バットを持たなくてもヒットが打てるよ」みたいな話。

以上の2作は良さがわからなかったw

「弟子」孔子に弟子入りした子路という男の話。自分、孔子その人の出てくる小説を読むのは初めてだが、孔子の喋ることが漢文そのものwで何となくしか理解できなくて困った。

やはりオススメは「李陵」。

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