2019年5月30日木曜日

ラドヤード・キップリング「ジャングル・ブック」(1894-95)

ラドヤード・キップリング(Joseph Rudyard Kipling, 1865-1936)「ジャングル・ブック」を初めて読んでみた。講談社青い鳥文庫(岡田好恵訳、きよしげのぶゆき絵)2001年版で。

世界的に有名な児童文学作品だが一度も読んだことはなかった。
自分は子供の頃にかろうじて絵本か何かでほんの少し接したことはある。ディズニーアニメもCG実写映画も見たことがない。
おそらく今回が自分にとってこの作品の最初で最後の読書。一度は読んでおきたいと思っていた作品。

ラドヤードという謎の名前に長年疑問を持っていたのだが、調べてみると父親はイングランドのラドヤード湖を息子に命名したらしい。キップリングはインド・ボンベイの生まれ。
キップリングは今も英国ではとてもよく知られ読まれている詩人で児童文学者で作家。英国人初のノーベル賞受賞者。

狼に育てられ、熊にジャングルの掟を教育された少年モーグリが主人公。モーグリとジャングルの動物側からの視点で物語は書かれている。

たぶん人間と動物がジャングルの中で一緒に生活するほのぼのファンタジーかと思っていたのだが、児童文学としては意外に重い気がした。
ヴィクトリア朝時代の英国人の帝国主義的文明論的な分析などは自分はしない。そういったことは専門書を読むべき。

未開のインド奥地に英国人が文明と法治を持ち込んだ時代。ヒンズーの司祭と中世以前の村人が畑を耕し村をつくる。
そして狼、虎、熊、黒豹、ニシキヘビ、象、ヤマアラシ、トンビ、といった動物たちがジャングルの掟に従って生きている。村人とジャングルがせめぎ合っている。象たちが村を襲って人々を追い出した想い出を語ったりもする。

だが、鹿やヤギは殺される食糧としか描かれていない。意外にも猿たちは他の動物たちから軽蔑されている。

読んでいて「これはひょっとしてもののけ姫の元ネタでは?」と感じた。自分、まだ一度も「もものけ姫」を見たことないけど。
狼と黒豹を引き連れた少年が、嘘つき老人漁師にそそのかされた村人によって、モーグリを養子にしたために悪魔と罵られ殺されそうになる両親を助けたりする。象や水牛やニシキヘビの協力を得る。

モーグリは私闘で長年のライバルだった虎を殺害し、肉は他の動物に与え、毛皮をトロフィーとして身にまとっている。今の時代、あまり子どもに読ませたい本としての地位は保てないのではないか? 

正直それほど面白さを感じれなかった。だが、少年と動物たちのやりとりはイキイキとしていた。

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