2019年3月17日日曜日

江戸川乱歩「幽霊塔」(昭和12年)

江戸川乱歩の長編はもう読まなくていいかと思っていたのだが、「幽霊塔」だけは面白いという人が多いので読みたいと思っていた。

というのも、少年時代の宮崎駿がこれを読んで「ルパン三世カリオストロの城」の時計塔のモデルにしたらしいから。壁の絵の目の部分がのぞき穴になっているのもこの本が元ネタらしい。

この本が1年近く探してやっと見つけられた。以前、東京創元社の現代日本推理小説叢書版をBOで見つけたときは540円もしたので見送ったw
もうこうなったらAmazonで買うか図書館に頼るかしかないかと思っていたところ、今回、春陽堂江戸川乱歩文庫版(1988年新装版の1992年第3刷)を310円で見つけたので、やっと購入。

この「幽霊塔」という作品は、アリス・マリエル・ウィリアムソン(1869-1933)の「灰色の女」という小説を、黒岩涙香が翻案長編小説化し、さらに乱歩がリライトした長編怪奇冒険小説。

大正の初めごろ、当時26歳の血気にはやる青年だった私、北川光雄の恐ろしい出来事の回想。
叔父・児玉丈太郎(退職した判事)が土地建物ごと買い取った長崎の山奥にある化け物屋敷を見に行く。
その屋敷には幽霊塔とよばれる不気味な時計塔があり、そこで美貌の若い閨秀作家・野末秋子と出会う。

この塔の中で6年前に老婆が惨殺される事件が起こっていたのだが、老婆の養女が逮捕され収監され獄死。私は秋子がその養女の墓参りをしてる姿を目撃。

やがて叔父と私はその屋敷に手を入れて移り住む。そして次々と不審な人物が登場。
屋敷で曲馬団から逃げた虎に襲われたり、庭の沼から首なし死体が見つかったり、傴僂の少年が監禁された怪しい蜘蛛屋敷があったり、東京の怪しげな人物を訪ねたり…と、北川の冒険が語られる。

この主人公の心の声がすごく自分に正直で笑う。秋子の美しさにメロメロのあまり、それ以外の美しくない女どもに容赦ない。心の中で容姿を「意地が悪そう」「不快」と罵倒。
さらに、秋子の付き人の女を心の中で「豚肥え婦人」とか呼んでる。酷いw

とにかく読者に飽きさせないように色々なことが起こるのだが、ぶっちゃけどれもが唐突感がする。
それに毎回毎回大げさに「世にも恐ろしいことが!」「意外な展開が!」「衝撃の事実が!」などと、まるでバラエティ番組のCMまたぎ常套文句のようなことばっかり言ってるw 読んでてだんだん呆れてくる。

ま、それが乱歩のいつもの語り口だが、会話がくどくてテンポが悪い気がする。読んでも読んでも進展しない。

ラストはやっぱり地下迷宮で先祖の財宝探し。そんでもって秋子の冤罪も晴れてハッピーエンド。主人公が嫌った栄子のラストでのキャラ変がひどい。
ぶっちゃけそんなに面白くも感じなかった。いつも通りの乱歩作品だった。

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