越谷オサム「階段途中のビッグ・ノイズ」(2006)という本を読んでみる。2010年幻冬舎文庫の2012年第10刷(!)。これも3年ほど前に350円で購入したもの。
自分はこの作家を知らなかったのだが、映画にもなった「陽だまりの彼女」(2008)の原作者としても知られている。
先輩が逮捕されたことで存続の危機を迎えた軽音楽部。キモいと蔑まれている古文教師を顧問に引き入れ、屋上へ通じる階段と踊り場を練習場所に、文化祭での演奏を目指して練習する…という青春ロック小説。
これ、何の期待もしないで読んだのだが、とても楽しく読めた。高校生たちよ、こんな楽しい青春を送れ!というメッセージを感じた一冊。高校生男子版「リンダリンダリンダ」。
各キャラがとても良い。たった一人残された軽音部の気弱な部長、喧嘩っ早いベース、ギターエリートのイケメンモテ男、顧問の暴言指導に嫌気がさして吹奏楽部を辞めたティンパニ担当、健康的に日焼けした水泳部ヒロイン、それぞれがイキイキとイメージできて躍動。
文化祭本番で意外な才能を見せるもっさり顧問。担当するクラスから覚せい剤で逮捕者を出してしまった過去を悔い、厳格なルールを強要してくるムッツリ女体育教師。生徒に理解のある校長先生。みんなキャラ的に良い。
教師への抵抗、窓も開けられない猛暑の階段での練習、恋、友情、ハプニング事故、青春映画に必要なものはすべてそろっている。
自分は読む前に、「暑苦しい感じだったら嫌だな」とか恐れていたのだが、この本はとてもいい感じで爽やか。名セリフであふれている。想像するだけで名シーン。
登場人物たちにやたらと軽妙で面白い会話をさせることに頑張りすぎる作家が多いのだが、この作家のセンスは自分ととても合っていた。バランスが良い。
自分の脳内で勝手に史上最高の青春ロック映画の名作が誕生w てか、なんでこんな素晴らしい原作を誰も映画化しない?!
近年、高校文化祭はロックバンドが減りヒップホップダンスグループばかりだと聞いている。この本は「ロック、がんばれ!」というメッセージも感じた。この本を読んだ高校生はきっとKISS、ラモーンズ、グリーンデイを聴きたくなるだろう。
この本、高校生、大学生、大人、すべての世代にオススメ。越谷オサムという作家の力量に感心した。今後、この作家の本を探し求めていこうと思う。
教師に反抗しないなら、それはもう若者じゃないなと思う。そのルールが出来た理由と趣旨を離れ、盲従だけを強いられる無意味さに目覚める若者が増えてほしい。
パワハラブラック企業の存在とか、地震台風で電車が止まっているのにスーツ姿で大挙駅に押し寄せその場でじっと立って待ってる人々とかをニュースで見るにつれ、それは高校生にもなってもただルールに従うことのみ強制される教育現場が生み出した弊害に思える。
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