2018年10月23日火曜日

A.C.クラーク&G.リー「星々の揺籃」(1988)

アーサー・C・クラーク & ジェントリー・リー「星々の揺籃(ゆりかご)」山高昭訳ハヤカワSF文庫を読んだ。
CRADLE by Arthur C. Clarke & Gentry Lee 1988
とくに読みたいと思っていた本でもないのだが、アーサー・C・クラークのハヤカワ文庫本はなかなか古本屋で見かけないので見つけたときに買っておいたもの。1998年文庫版第1刷。100円でゲット。

ジェントリー・リーって誰?火星ヴァイキング計画、木星ガリレオ計画の中心にいた宇宙工学エンジニアらしい。カール・セーガン「コスモス」シリーズのTVプロデューサーだったらしい。この作品が作家としてのデビュー作。のちにACクラークと共著で「ラーマ三部作」も完成させている。

なにやら地球と異なる惑星のヘビ型生物の性進化の描写から始まる。「2001年宇宙の旅」のような宇宙の大いなる意志的なモノリスのような、シリンダー型母船から降りる揺りかご。なんか、すごくイメージしずらい。

フロリダ・キーウェストの浜辺で鯨の座礁が頻発するニュースを取材する女性ジャーナリスト・キャロルは海軍のミサイルが行方不明になった情報も掴む。
スクープを狙って船をチャーターして出向するまでが長い。典型的な下世話アメリカ人同士のやりとり描写が延々と続く。

船長ニック、電子工学に詳しい黒人青年トロイ、そして記者キャロルがフロリダ沖海域を最新技術で潜水調査。三頭のクジラが守るように泳ぐサンゴ礁の奥底から金色の不思議な物体を発見。
ニックは沈没船の財宝かと思ったのだが、それは未知の物質でできていた…。

この本、とにかく脱線が多くて萎えるw なんで?ってぐらいに各キャラクターの生い立ちを執拗に描く。どれも本筋とまったく関係がない。映像なら一瞬で示すことができる内容を2ページぐらいかけてグダグダ書いている。
どんなセッ●スをしてきたかまで詳細にしつこく書いている。そんなことはどうでもいい!ああ、また始まった…とテンションが下がる。ずっとこの調子。

ウィンターズ中佐の演劇と17歳女優への性的妄想の話とか、ニックがトロイの作ったアドヴェンチャーゲームを酒飲みながら「キャラがポルノ女優やん!」と突っ込みながらやってて時間に遅れてキャロルぶちギレのシーンとか要る?

人類は太古の昔から宇宙の大いなる意思に監視されて導かれていたんですよ…というクラークらしい海洋宇宙SF。
クラークの想像力は凡人を超えていて、活字ではなんとなくぼんやりとしかイメージできないところもある。だが、最後のページをめくり終えたときに、それなりの充実感はあった。

人類を遺伝子改良したアナザー人類が現人類を駆逐してしまうかもしれない未来。最後にニックの下した決断は、あ、この人バカじゃなかったと思った。

この本が522ページもある。長い。それにしてもこの本は日本人の読解テンポに合わない。ムダを省けば4分の1ぐらいにできた。
SNSに感想を書いている人の多くがG.リーのしつこさに辟易しているようだ。この本は「もう読むものがない」という人にしか勧められない。

この小説が発表されたのは1988年。この当時よりも近未来の90年代を描いているようだが、ビデオテープのデータをディスクにするとか転送するとか、フロッピーやらコピーやら、会議の風景だとかすでにもう過去。ケータイもないのかよ。現実はSFをとうに追い越した。

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