橋本愛の主演作に「PARKS パークス」(2017)という映画があるので見てみる。
井の頭恩賜公園の100周年を記念した吉祥寺ムービー。製作は本田プロモーション、配給はboidという、そういう規模の映画。
なにせ橋本愛、永野芽郁、染谷将太というヤングスター3名をそろえているので、それなりに話題作だったと思われる。監督脚本編集は瀬田なつきというスターダストの映像ディレクターだ。
プロデューサーに松田広子が名を連ねている。自分はこの名前に記憶があった。2007年の新垣結衣主演映画「恋するマドリ」も製作した人だ。若手女優を輝かす映画だと期待して見る。
卒論の件で留年するかも?という窮地でしかも失恋直後のヒロイン純(橋本愛)の住むアパートに、見ず知らずのもうひとりのヒロイン・ハル(永野芽郁)が突然現れる。
話によれば永野の父には佐知子なる元カノがいたっぽい。橋本のアパートに50年前に住んでいたのが佐知子らしい。どうやら日常ミステリー風味もある青春映画っぽい。
さらに佐知子の孫の染谷将太も巻き込む。永野もノリが軽いがこいつがさらに軽い。
ここまで簡単に意気投合できるってすごいな。
開始から映像のテンポが若々しく爽やか。この二人がずっと走ってる。キラキラした若者を描くとしたらこうするしかない。若いってことは行動に勢いとテンポがあって良い。
そして井の頭公園が気持ちよさそうな場所として完璧で理想的に描かれている。
橋本愛は見る角度によっては顔が角ばってるが、この映画のヒロインはだいたい正しくカワイイ橋本愛が撮れている。そういうところ、女性監督&プロデューサーは間違いない。
永野芽郁というSEVENTEENモデル若手新人女優がここ数年キテいることは認識していたが、自分はまだ一度もこの子の演技を見ていなかった。「半分、青い。」は1回も見ていない。この子はなんと地元が吉祥寺だ。
登場人物たちがみんながヘラヘラ笑って軽~くて明るい。「留年するかも」という程度の現実ぐらいしか描かない。社会性もメッセージも爽やか青春ドラマ。
井の頭公園をテーマにした記念映画だと聞いて、偉いおじさんたちのセンスがさく裂するベタなヒューマンドラマでは?と不安だったのだが、若手女性監督ならではの作風。気持ちよくストレスなく見ていられる。(前半だけは)
音楽はトクマルシューゴ氏(映画にも本人役で出演)で、わりと自己主張のある、視聴者の注意が向かいがちな音楽だが、開始10数分、音楽ビデオとしてもいい感じ。
テレビCMのようなわかりやすい大げさ演技をテンポよく詰め込んだ感じがする編集の度が過ぎている。
祖母の遺品のオープンリールテープを聴くシーン、音楽スタジオでの曲作りシーン、街でサンプル収集シーンでそれが顕著。これではウルサ型の映画おじさんたちから「映画ではない」と言われてしまいそう。
だが、重くないドラマにそういう演技が合っている。3人がひたすら楽しそう。
バンドメンバーを集めるべくそのへんに居る人に声をかけまくるシーンとその後の展開がマンガっぽい。
ずっと軽いままサラサラと流す。だが、どこかでギアが変わらないと120分の映画として見るのはキツくなってくる…と思っていた。後半になると永野が「え?タイムトラベラーかなんかなの?!」って謎のファンタジー展開。過去の回想シーンのはずが、そこに入り込んでいる。どゆこと?
橋本は邦楽ロック好きなので、きっとギターを触っているはずと思っていた。この映画で橋本はギターを弾いて歌う。バンド演奏シーンもあわせてすべて素晴らしい。60年代フォーク歌謡が現代のバンドアレンジでイイ感じ。染谷はサンプリング担当のラッパーだったのかよ。
このアレンジに永野は浮かない顔。
わりと有名らしい音楽フェスに出させてもらって大事故w このライブが途中で止めたくなるほど見てらんないw ほとんどのメンバーが食中毒で不在なら出演キャンセルしろ。
終盤は見ていてひたすら困惑。なにこれ?どういうこと?どう着地させるつもりだ?と心配しながら見ていたのだが、やっぱりな…と失望でフィニッシュ。ミュージカルまでぶっこむの?!
最初からちゃんとプランがあったのか?と疑うレベルに転げ落ちていく。
「あなたは誰?」と冷たい怖い顔の橋本に問い詰められるも、結局ハルの正体が明かされずイライラ。
この映画は何も説明してくれない。ヒロインのように現実と幻想、ハルの小説の合間で見ている側も混乱の極み。
若者たちは恋をして別れて、いつの時代も同じようなことを繰り返していても、井の頭公園はずっと変らずそこにあって私たちを見守ってるよ…というようなことが言いたいだけの映画か?
桜の下を自転車で走り橋本愛がナレーションをすると「リトルフォレスト」の感覚がよみがえる。B級C級であっても橋本愛が画をもたせてる。さすが橋本愛だわ。そういえば染谷と橋本は「寄生獣」と同じペア。
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