2018年5月9日水曜日

小野不由美「残穢」(2012)

小野不由美「残穢」(2012)を読んだ。平成27年の新潮文庫版がそこに90円で売られていたので、昨年秋に北関東のBOで購入。

これは既に2015年公開の竹内結子&橋本愛主演映画版で見た。以前の自分なら、すでに映画で見たものを本で読む気が起こらなかったのだが、最近、原作の方が映画を上回って素晴らしいという例に遭遇することが多かったので読んでみることにした。

読み進めるうちに、映画がこの本と展開も雰囲気もかなり忠実だったことを知った。映画を想い出しながら読むことになった。映画では描き切れない行間がびっしり書き込まれている。
作家である主人公と久保さんが、岡谷マンション建つ土地にかつてあった家とそこに住んでいた人々について、平成、昭和、戦前、大正、明治と調査していく話。登場人物が多い。

小野不由美は「黒祠の島」「東亰異聞」とか異常に面白くて、この「残穢」にも期待していたのだが、結論から言って「残穢」は自分には合っていなかった。
そもそも自分はこういった心霊現象怪談ばなしには白けたものを感じてしまい面白味を味わうことができない。

だが、心霊現象がそこで発生する理由を合理的に論理的に探究していくという点では自分と好みが合っている。
自分が住んでいる土地にかつて住んでいた人を掘り下げていくと、そこに不幸な死がいくつか判明していく過程は怖いかと思う。死の穢れがそこに住んだだけで感染していくとか怖い。赤ちゃんの声でノイローゼになって自殺したり人を殺したり。
調べてもやがて行き詰まる。それほど詳しいこともわからないし因果関係もあいまいなまま。

土地を買い家を建ててそこに住むということはどういうことなのか?戦後日本、高度経済成長、地価高騰、バブル崩壊、流動していく住民とその当時の社会情勢のノンフィクションのようにも思えてくる。
読んでいて現実と虚妄の境界がわからなくなる。実際にあった事件なども文中に登場。

呪いの震源地・奥山家を移築した北関東の旅館で1946年に旅館主人夫婦、夫人の父親、子ども3人が殺害された強盗放火殺人事件が315ページに出てくる。これ、最近読んだばかりの松本清張「日光中宮祠事件」のことじゃん!

日本は今後、所有者すらわからない土地が大量発生していくという大問題を抱えている。

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