黒岩重吾(1924-2003)による1997年から1999年にかけて「オール読物」に不定期に掲載された短編7本からなる「斑鳩宮始末記」を2003年文春文庫で読んだ。
自分、歴史小説はわりと読むけど、時代小説はほとんど読んでない。友人の本棚にこの本があったので借りた。
なんと、推古朝時代にも犯罪捜査組織はあったはず!」という自由な発想で書かれた捕り物帳的な時代小説。厩戸皇子が冠位十二階の制に着手し改革に取り組んでいたころ、皇子の寵臣・秦河勝の部下である子麻呂が事件を捜査する。
川で斬り殺された死体が発見された!子麻呂捜査官が皇子と河勝の威厳を借りて捜査に着手。
白鳳時代であっても殺人事件はあったに違いない。まだ人心にそれほど仏教は浸透していないこの時代、人は人を簡単に殺していたはず。だが、庶民はナイフですらまだ持っていない時代。
この時代の人が論理的に科学的に犯人を捜してたとは思われない。だが、この主人公(30代)は現場保存したり方々に話を訊きに行ったりする。それでなんとなく犯人がわかる。
なにしろ人々は日々食べていくのがやっとで娘たちも売られる。奴婢とかいる時代なので人権と言う考え方も皆無。
子麻呂には魚足という中年の有能な部下がいるのだが、こいつが「ですがな」口調でまるでナニワ金融道。
この時代は40歳で老人あつかいなので、男女の楽しみといったら「媾合う」ことしかない。まるで野獣のように男女が体を求めあう。
自分、黒岩重吾の古代史ベースの小説本を読むのがこれで2冊目だが、この作家は古代の大和を、性規範も存在しない世界観で描くのが個性っぽい。
厩戸皇子は殿上人としてたまに現れて「三宝」と先進国・隋をよりどころに助言監督をする人にすぎない。
面白かったか?うーん、へんなものを読んだという感じがした1冊だった。最後の「暗殺者」は高句麗や隋との外交関係と政治もからんでハードボイルドで面白かった。
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