2018年4月20日金曜日

黒井戸殺し(2018)

4月14日フジ系でスペシャルドラマ「黒井戸殺し」が放送された。三谷幸喜がアガサ・クリスティ作「アクロイド殺し」を昭和27年の日本の田舎を舞台に置き換えた翻案ドラマ化作品。

これ、クリスティ愛好家にとってもミステリーファンにとってもあまりに有名な作品。「オリエント急行殺人事件」に並ぶクリスティ女史の強引でトリッキーな結末に「嘘だろ…」と絶句する視聴者が続出!w
ただ、事前のプロモーションで「映像化不可能」とか煽るのは控え目にしてほしかった。犯人を事前に知らない素の状態でこのドラマを見れた人はしあわせだ。

自分は15歳ぐらいのときに読んだ。細かい部分はほぼ忘れているのだが、犯人だけは覚えていた。この犯人は忘れようがないw
ポアロは勝呂武尊(すぐろたける)という人物に名前こそ変えられているのだが、エキセントリックさはまさにエルキュール・ポアロその人。エルキュールとは「ヘラクレス」のことなので、日本神話上のヘラクレスということで武尊。
このポアロがまさに狂言師野村萬斎オリジナルなポアロ。ラストシーンでの怒りと苦悩の末の表情は何も知らないで見た人は笑ってしまうかもしれない。

この物語のもう一人の主役が医師・柴先生を演じた大泉洋。この人がこの村で唯一の普通市民。あとは全員、アクが強いか天然w 
原作にない姉を演じた斉藤由貴は大泉と並んでこのドラマのMVP。いや~、脚本も素晴らしかったけど、キャスティングも素晴らしかった。

クリスティ作品は犯行動機がとにかくドライだけど、三谷版は日本の視聴者の趣味に合わせた動機を用意していた。これが悪くなかった。「ひさびさのカレー」という台詞の印象が強い。伏線の回収もみごと。名優たちのかけ合い、演出もなにもかもが期待を大きく上回った。
これだけ改変しているのに、それでいて原作リスペクトの度合いが強い。
3時間ドラマはちょっと長いかな…と思ったけど、ぜんぜん退屈しなかった。これ、「真田丸」を見ていた人は別の意味でさらに楽しめたw 真田丸キャストだらけ。

昭和27年の片田舎に舞台を移したことで、横溝正史っぽさが加わっていたw 復員服姿の男、ハンチング帽の息子、遺言書を開示する弁護士、ぷりぷり怒ってる喪服の着物姿の夫人、古い旅館でのやりとり、もう何もかもが市川崑金田一で見た要素。金田一愛。

このドラマのせいで「アクロイド殺し」の犯人が広く世間に知られるところとなってしまった。もうしばらくこの手は使えない。
そして多くの人がアガサ・クリスティはすごい!と気づいてしまったかもしれない。自分ももう一度「アクロイド殺し」を読み返したい。どこかで本を手に入れないといけない。

アガサ・クリスティ翻案ドラマ化はこれからもお願いしたい。この春のクリスティドラマ3連発はフジの「黒井戸殺し」が朝日の「パディントン」「大女優」を大きく引き離して圧勝。

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