2017年12月6日水曜日

横溝正史「花髑髏」(昭和12年)

同じ店で1冊100円で3冊まとめて買った横溝正史の古い角川文庫もこれで最後。今度は「花髑髏」を読む。戦前の3本が収録されている。

昭和51年初版(昭和52年第7刷)という古い本。それにしてもジャケットがヤバいw 趣味が悪すぎる。紙はだいぶ酸化が進んでる。
横溝正史を何でもかんでも読むつもりはなかったのだが、今では古本でしか読めない作品なので、つい買っておこうと思って。

1本目「白蠟変化」(昭和11年)は講談雑誌に連載されたものだそうだが、まさに講談みたいな庶民の娯楽作。作品とか高尚な堅苦しい呼び方をしたくなくなるw

この1本で1冊の3分の2を占めている。半分ほど読み進めてやっと三津木記者と由利先生登場。え、これってちゃんと着地すんの?話が予想通りに進んでくれない。悪人VS.悪人VS.悪人のバトルロイヤル的なめちゃくちゃな展開。

だが、予想外な真犯人がいたりするびっくり展開だった。これは十分に面白かった。

2本目「焙烙の刑」(昭和12年)え?フツーな監禁事件なんですけど。これは面白さが見いだせなかった。
焙烙(ほうろく)ってたぶん若者は知らないんじゃないか?自分も実物はみたことないけど、文京区に「ほうろく地蔵」っていうのがあって、それで焙烙が何か知ってた。

3本目「花髑髏」(昭和12年)は花髑髏という署名で由利先生の元へ殺人予告?が届く。
これは戦前の横溝正史の作風そのもの。雰囲気も味わいも THIS IS 横溝正史!

出生の秘密を知って、顔も知らない親の仇を打つ。そんなことって前時代的に感じる。
それに「気違いの血が流れている」とか、旧制専門学校(現大阪大学薬学部)卒の知的エリート横溝正史ですら当然のように持っていた当時の常識が、今ではまったく許容できない。

これ、まだ1度も映像化されてないようだ。だいぶ改変しないとドラマ化できない。

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