友人がこの本を持っていたので借りて読んだ。「江ノ島西浦写真館」(光文社 2015年12月)だ。
「ビブリア古書堂」で知られる三上延による、江ノ島の100年続いた写真館の閉店と、古い写真にまつわる謎を扱った青春ミステリーらしい。
「ビブリア古書堂」はドラマもそこそこ面白くて、原作は4巻まで読んだ。だが、5巻以降は読んでないな。古書に関するミステリーと蘊蓄は自分に新しい地平を開いてくれた本ではあったのだが、フジ月9みたいなヒューマンドラマ展開でもうこれ以上あんまり自分から進んで読みたくも思えない。
だが、江ノ島は何回も行ってよく知ってる場所なので興味を持った。江ノ島はそれほど大きくもないので、この本で描かれる場所はなんとなくイメージできる。
江ノ島は土産物屋と飲食店と旅館ばかりの観光地だと以前は思っていたけど、古い漁師町でもあって今もふつうに生活している人がいる。近年はとても外国人観光客も多い。土日はどの季節も参道が人であふれている。
ヒロインは西浦写真館の女主人の20代中ごろの暗くて地味な孫。学生時代に写真を学んだのだが、SNS炎上事件で幼なじみとの関係も失ってしまいカメラを見るのも嫌になってしまったという。
「少しビターな青春ミステリ!」とオビに書いてある。忘れてしまいたい学生時代の想い出…。
写真館を切り盛りしていた祖母が死んで、人気作家である母に代わって遺品の整理のために写真館を訪れ、引き渡しの済んでいない写真を整理。そこからドラマが始まる。
全4話が収録されている。第1話は江ノ島に別荘を持つ医者の息子・秋考との出会い。これ単体としてはとくに面白くもない。それぞれの古い写真に写っている男の子がみんな顔が同じ?!というミステリー。これは第4話であざやかに伏線が回収されるのでしっかり読んでおくべき。
第2話は芸能人になった幼なじみとの関係を失った苦い出来事の回想。これもそれほど面白くもないのだが第4話につながってるので注意して読まないといけない。
第3話はこれだけで十分面白いエピソード。銀塊の寸借窃盗事件。犯人目線で描かれているのだが、これがまるで松本清張の短編みたい。鋭いヒロインの指摘によってバレていって冷や汗。
第4話はこれまでの伏線がすべて回収される。ヒロインの前に現れた秋考の過去と現在のミッシングリンク。この医家の家族がなんかヘンだ。
ネタバレになるので詳しくは書けないのだが、医学生の息子が事故で記憶障害になったついでに●●をしてしまったという事案。事件とはいえないけど、それ、医者として人間としてどうなんだ?というちょっと信じられない展開。そんなことってある?って思ったけど、あってもおかしくない。
さらにプロローグをエピローグで回収。おぉ…と驚く。
全体的に「ビブリア」と同程度のクオリティだったけど、若い人にはそれなりにオススメできる1冊。
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