自分が手に入れたものは昭和53年初版の角川文庫版(昭和60年の第13刷)。状態がよい。
読んでみて驚いた。江戸川乱歩の「怪人20面相」のような「少年探偵団」シリーズとほとんど何も変わらないテイスト。
おそらく終戦直後ぐらいに書かれたもの?横溝が住んでいた成城近辺の描写が出てくる。
小学生の主人公が事件に巻き込まれ、金田一耕助の助けを得て、等々力警部らおなじみの面々と、洋館やら秘密の抜け穴、海賊船、山の中にある城のような賊のアジト…、という冒険。
だが、大人が読むほどの内容がないw
ま、中学生以下が読む分にはワクワクできるかもしれない。自分はそこそこ面白かったけど、それは小学生のころ読んだ少年探偵団へのノスタルジア。
表題作は155ページだが、そのほかに「悪魔の画像」、「ビーナスの星」、「怪盗どくろ指紋」という短編を3本収録。
こちらも主人公が少年なのでジュニア向け。どれも内容が平易。現代の子供が読んでもこの内容ではとくに新鮮さや驚きはないかもしれない。名画や宝石をめぐる盗難事件、横溝正史らしい一人二役などのパターンが繰り返される。
巻末解説に初出年が書いてない。
「仮面城」は昭和27年に「小学5年生」に連載。12歳の主人公・文彦くんが、自分を探している人がいることをテレビで知る。昭和20年代に一般家庭にテレビはないので、角川文庫版は改変されているのかもしれない。
森の中で犯人を追いかける段になって、金田一さんが自分の袴がじゃまで悪態をつくシーンがあって笑ってしまった。
「ちくしょう、このいまいましい袴め!」児童向け金田一なんて、金田一じゃない!って言う人もいるかもしれないw
「悪魔の画像」は内容から戦後だとわかる。調べてみたら昭和27年に「少年クラブ」が初出。
「ビーナスの星」にはK大生・三津木俊助が登場するので戦前の作品に違いないと思って読んでいた。昭和11年に少女向け雑誌に掲載された作品。
「怪盗どくろ指紋」には探偵由利先生と新聞記者三ツ木が登場するので、これもやっぱり戦前の作品だろうと思っていたら、昭和15年に初出。
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