2017年1月7日土曜日

鈴木三重吉 世界童話集「湖水の女」(大正5年)

鈴木三重吉編 世界童話集「湖水の女」(大正5年 春陽堂)のほるぷ出版による初版復刻シリーズ本(昭和49年)がそこにあったので手に取った。挿絵は水島爾保布によるもの。大正時代っぽく味わいのある装丁なので買って帰った。108円。

鈴木三重吉は従来の童話というものが「ただ話されているのみ」だとか、「下品」だとか「投げやりで俗悪」だとか不満を感じていた。序文では鈴木なりの、新しい世界の童話への野心を語る。

4本の世界の童話を収録。「湖水の女」はウエイリス(どこだ?英国?ウェールズ?)の伝説、「二人出ろ」はロシアの御伽噺。「馬鹿ぞろひ」「龍退治」はイタリアの御伽噺。

「湖水の女」は、湖で美しい女と出あった若者、乾いたパンを渡して気を引こうとしたものの失敗。母親に相談し、今度は焼かずにこねたパンを持っていって失敗。
もう一度相談して、「中ぐらいに焼いたパン」を持っていったら気に入ってもらえ、結婚してもよいと言われる。
女の父親らしき人物(妖精?)が出てきて、姿がそっくりの娘を二人さし出して、今君が見たのどっち?って質問w 
若者は靴の結び方から女選びに正解w 「女を絶対に叩いてはいけない」「3回叩くと出ていくから」と約束をさせ念を押す。たくさんの牛や羊をご祝儀にもらって家へ。やがて3人の息子も生まれる。

だが、長年一緒にいる間に、ちょっと肩に手を置く程度のことでも「1回叩いた」とカウントw ひどい。やがて湖に帰ってしまう。
湖で嘆く子どもたちの前に姿を現した女、子どもたちに薬草を教える。この息子3人がウエイリスで一番のえらいお医者さんになりましたとさ…って話。

うーん、自分が子どもだとして、この話から何かを学ぶとすれば、昔も今も「女を手に入れることは難しい」ということかな。

「二人出ろ」はいかにもロシアの貧しい農民っぽい話。現代人にはそれほど価値があるように思えない。助けた鶴からもらった「ご馳走をしてくれる二人の男が出てくる袋」の話。なんだこりゃ。

「馬鹿ぞろひ」はそのタイトルからして魅力を感じていたのだが、この御伽噺が一番シュールで面白かった!まるで落語だし、藤子F不二雄そのまんま。

婚約者を家に招いてご馳走を振舞う娘とその両親。食事の途中でワイン蔵に行ったけどなかなか帰ってこない。娘はやがて生まれてくるであろう子どもがいつか死ぬことを想像しただけで嘆いておいおいと泣いていた。帰りが遅いので様子を見に来た母親もその話を聞いておいおいと泣く。そして父親も。
あまりの馬鹿さかげんに嫌気がさした男は旅に出るw

花嫁がやって来るという日のとある街で、馬に乗った背の高い花嫁が街へ入る門を通れないというので、大勢の人が言い争いをしてモメていた。
「馬の脚を切ればいい」「花嫁の首を切れば早くね」「門を壊してしまおう」。

男は持っていたステッキを振りかざして殴りつけようとすると、花嫁は首を引っ込め門をくぐることができた。「ありがとう。私たちにはあんな良い考えは思いつかなかったわ~」

旅をしているうちに「世界には馬鹿しかいない」「自分の家族のほうがマシ」という結論に至るw そして家へ帰るという話w こんな話を他に知らない。

挿絵がヘタウマ。抱腹絶倒なのでドラマ化希望w 

「龍退治」は熊、獅子、狼といっしょに、畑を荒らして人を食う龍を退治するというおとぎ話。

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