新潮文庫で読む科学史、サイモン・シン著(青木薫訳)「The Code Book 暗号解読」を10年ぶりぐらいに読み返した。
最近になって上下各108円で見つけたので即購入。この本は面白かった記憶がある。サイモン・シンというインド系英国人の書く科学史よみものはどれもが面白い。高校生にもオススメ。
有史以来、為政者にとって重要なツールだった暗号の歴史を、エピソード満載で教えてくれる。暗号って社会にとって重要なものなのに、学校ではまったく教えてくれない。
自分は意外に思ったのだが、古代ローマの時代から第1次大戦まで、人類は単アルファベット換字式暗号、ヴィジュネル暗号をずっと使い続け、それほど進歩がなかった。
上巻ではスコットランド女王メアリ・スチュアートの命運を握った、エリザベス女王暗殺謀議「バビントン陰謀事件」について教えてくれる。
「弱い暗号を使うぐらいなら、最初から暗号など使わないほうがましだ」という教訓を教えてくれる陰惨な事件。謀議に加わったものは酸鼻をきわめる殺害方法で処刑されている…。
アルファベットを他の文字で置き換えた暗号は、アルファベットの出現頻度を調べる統計的手法で解読することができる。そのことについて書かれた最古の書物はなんと9世紀のアラブ人による書。
以後ヨーロッパではずっとこの方法を多少複雑化させたものが主流。
人類史上次の画期的な暗号は、16世紀フランスの外交官ヴレーズ・ド・ヴィジュネルによって考え出されたヴィジュネル方陣を使った一文字ごとに違う暗号化方式。
この暗号も19世紀の英国人で暗号の天才チャールズ・バベッジが最初に解法を見つける。その後、プロイセンの退役軍人フリードリヒ・カシスキーが本にして出版。
英国は国家機密としての暗号の重要性を知っていたため、バベッジの存在は長らく知られることがなかった。
だが、解読不能の暗号もある。筆者はアメリカ西部劇版徳川埋蔵金とも言える「ビール暗号」の興味深いエピソードを紹介。
「ビール暗号」の詳しいことはwikiを参照してもらいたいのだが、wikiに書いてあることはそっくりそのままこの本からの引用だ。なので、ビール暗号を日本に最初に紹介した本はこの「暗号解読」だったっぽい。
第1次大戦で無線が登場し、暗号の重要性がさらに増す。
ドイツUボートによる無制限潜水艦戦をめぐるツィンマーマン電報の解読が、暗号解読というものが数年間の外交努力をも一瞬でしのぐことを示した。
そしてシェルビウスの考案したエニグマ暗号機が登場。
回転するスクランブラーの円盤、プラグボードの配線、リフレクター、このへんの説明は読んでいて全然頭に入ってこなかったw
エニグマ暗号機はその圧倒的複雑さで英仏が匙を投げた。だが、ポーランドの若き数学者レイェフスキが最初の突破口。そして英国ブレッチレーに密かに集められた天才たち。そしてアラン・チューリングの悲劇を描いて上巻は終わる。
下巻では暗号というものがさらによくイメージできなくなっていく。
第2次大戦でアメリカ軍で採用されたナヴァホ暗号、ヒエログリフ、線文字B解読といったエピソードを紹介しつついよいよ公開鍵暗号へ。
鍵配送問題を解決する一方向関数に素数を使えばいいんじゃね?というブレイクスルー。
そして、PGPの登場。NSA、FBI、アメリカ政府の政治かけ引き、そして量子コンピューターが登場する未来、ゼッタイに解読できない暗号へと想いを廻らす。
ここ、量子力学の世界がまったく想像できないのでどんどんちんぷんかんぷんになっていく…。
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