エリートヴァイオリン奏者でコンサートマスター松坂桃李が、老指揮者西田敏行と対立。再起をかける挫折したメンバーの寄せ集め三流オケがコンサートに向けて練習を重ねていく人間ドラマ。
これ、企画を見た段階でたぶんダメ映画になるだろうな…って思ってた。たぶんBC級。miwaが出ているという希少性がなければまず見ない。
オーケストラを描いた青春群像コメディドラマの傑作として「のだめカンタービレ」がある。
そして、偽オーケストラを編成して再起をかける中年指揮者の人生の悲哀を、社会風刺と笑いと涙のドタバタ喜劇に仕立てた爽快なロシア映画「オーケストラ!」という傑作もある。ほんのちょっとだけ期待して見た。
かなり取材をがんばったせいなのか、西田演じる老指揮者がリハでそれっぽいことを言う。ヴァイオリンがひとりだけD線で弾いてることを指摘したり、楽器の手入れが悪いことを見抜いたり、オーボエのリードを代えるように要求したり、ホルン奏者の歯が悪いことを見抜いたり、指揮者として優れた耳を持っていることは描かれる。
だが、怒鳴って汚い言葉を浴びせるとか、哀れな老ヴァイオリニストを何度もダメ出しして一人で弾かせさらし者にしてコンマスがぶち切れとか、クラシック音楽の世界にありがちな酷い人間性も見せる。過去にオザワN響事件みたいなボイコット騒動も起こしていた。
西田のキレ方を見て、ああ、きっとクレンペラー、セル、チェリビダッケといったガンコ老人たちもリハではこんな感じだったんだろうなって思った。
劣悪な練習環境を改善するために音響空間を改善するために独り大工仕事とか、見た目が粗暴な作業員風でユニークすぎる。
芸術家である指揮者は美というものに強いこだわりをもっている。身なりが質素な人はいても、あんな汚い人はまずいない。
それに、一流の楽団とキャリアを積んで老巨匠になった指揮者だけが尊敬される。アマチュアのエア指揮者はどれだけ芸術的素養が高くて知識があっても相手にされない…。
一流じゃないプロの演奏家の悲哀。たまに心の底からすばらしい演奏ができたとしても、それだけじゃやっていけないと思う。生活のためにアルバイトしている団員がいる一方で、主人公はあんな部屋に住めて高価な楽器をもっている。相当な資産家の家の子なんだろうな。
クラシック音楽に関わったことのない人にはきっと思いもつかないようなプロの世界。実際によくある風景、指揮者あるある、オーケストラあるあるの連続なんだろうと感じた。
だが、あの編成のオケからあんな音はでないと思う。打楽器がティンパニだけ?ピッコロ奏者はいないの?たぶん学生オケ、アマチュアオケのほうが充実してる。
クレジットを見たらベルリン・ドイツ交響楽団の演奏なのかよ!それはやりすぎ。
それに、いまどき「運命」と「未完成」2曲のプログラムでチケットが売れるの?こんなプログラムある?ちなみに自分は「未完成」を自分から求めて聴かないし、ほとんど聴いたことが無い。自分は興味のある曲目をCDでしかクラシックを聴かない。コンサートとかまったく関心ないw
違和感を感じるシーンとエピソードだらけといわざるをえない。クラシックに関わってる人、そうでない人、その中間の人、誰もが居心地が悪いと思う。
やっぱりストーリーと脚本に爽快感とカタルシスがないヒューマンドラマ。最後の一人だけのコンサートのシーン、これが決定的にダメで不要。病気の妻が死ぬことで、見ているひとはうっかり涙の感動作だと思ってしまうかもしれない。
主人公の父の死、フルート奏者の父の震災での死、やたらと死…。そういえば同じ原作者の「神童」もよくわからない映画だった。見ていてわかりづらい芸術家の心。情緒にどうでもいい専門知識をまぶしてそれらしくしてる。たぶん原作せい?読んだことないけど。
ほとんどのオーケストラ映画は演奏シーンが上手くいってない。クラシック音楽に日ごろ関心のない人はクラシックを体感できない。楽器ができない人に演奏シーンをさせるのって難しい。
特に弦楽器は左手は映さないにしてもボウイングがある。映画「のだめ」でブラームスを表情だけで弾く水川あさみは例外的な素晴らしさだった。あんな表現のみが可。
miwaは明るくて天然でかわいくて面白い子だった。異物が混在している感があったにしても輝いていた。映画自体がミラクルに至っていないことだけが残念。miwaのキャリアになくていいものだった。え!?miwaにシモネタ?
miwaは声質が女優に向いていると感じた。これからもmiwaは積極的に何でもやっていくべきだ。スターとはそういうものだ。おんな福山雅治のようになっていけ!miwaはYUIのようになってはいけない。
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