「D坂の殺人事件」は明智小五郎が初登場した作品なので有名。
春陽文庫?なにそれ、そんな文庫を知らない。新潮文庫の江戸川乱歩のほうが短編のセレクトがいいように感じたけど、表紙のイラストがヘンテコだったので、春陽文庫版を選んだ。108円で手に入れた。
- 「何者」(昭和4年 時事新報)
- 「D坂の殺人事件」(大正14年 新青年)
- 「一人二役」(大正14年 新小説)
- 「算盤が恋を語る話」(大正14年 写真報知)
- 「恐ろしき錯誤」(大正12年 新青年)
- 「赤い部屋」(大正14年 新青年)
- 「黒手組」(大正14年 新青年)
なるほど、庶民に向けて書かれたものなので表現も文体もわかりやすい。通俗的だ。昔も今も、こんな小説を子どもが読むの、親はいい顔しないわけだ。
大正時代の常識が現在の若者には理解できないので、読んでいてイメージができないことが多い。「D坂」を読むのは人生で3回目ぐらいだったけど、特によくイメージできない作品だ。
長屋の構造がどうなってるのか、その古本屋がどんな間取りなのか、活字で書いてあってもよく意味がわからない。それに、当時の電灯のしくみも別途解説がなければ理解できない。この時代の庶民はみんな着物姿だ。浴衣の柄だとか、昔の人の常識が今ではまったく通じない。
「残虐色情者」「被虐色情者」とか「女のマゾッホ」とかw 小学生が読んでもまったく理解できないだろうし、大人も理解が難しくなってる。庶民はみんな銭湯に行っていたので、プライバシーがないし、体に傷があればたちどころに噂になる。
「何者」は短編推理小説としてわりと古典的なストーリー。鎌倉の友人(結城少将の息子)の家に滞在中の「わたし」と甲田に起こった事件の顛末を描いてる。
これも紐の結び方とか読んでいて意味がわからない箇所がある。今では正しくない表現「醜いかたわ者」とか頻繁に出てくる。
徴兵制の残る韓国の人がこれを読んだら、すぐに動機がわかってしまうと思う。それに大正時代は徴兵逃れに対する世間の眼差しが冷たかったんだな…って学んだ。
「算盤が恋を語る話」はどってことない短編小説なのだが、今回読んだ7編の中でちょっとだけ面白かった。現代でも通じるっぽい話。ショートムービーにしてみたい。
この本に収録されてる短編のすべてが面白かったわけでもない。江戸川乱歩の自分の評価が上がりも下がりもしなかった。
春陽文庫は、サラリーマン小説、探偵小説、捕り物帖、時代劇などの大衆小説を専門に出しているんですね。いまや、どこの文庫もなんでもありなんだけど、以前はそういうジャンルは大手は殆ど扱っていなかった。
返信削除乱歩の短編は「二銭銅貨」「押絵と旅する男」「目羅博士」「人間椅子」「鏡地獄」あたりが抜けているでしょう。
今回の文庫は、初期作品ばかりなのであまり際立ったのが収められていない気がします。中では「赤い部屋」が一番世評が高いはずです。
「人間椅子」はすっごく面白いです。こんな小説、世界のどこ探してもないのでは?「赤い部屋」は乱歩のイメージにぴったりの趣味の悪いオチ。あんまり好きでもないかなぁ。
返信削除実は乱歩はもう読まなくていいかな…って思いかけてたw オススメ作は今後探していこうかと。
そういえば偶然ですが、今夜NHKのBSプレミアムで、「シリーズ・江戸川乱歩短編集 1925年の明智小五郎」と銘打って30分の「D坂の殺人事件」を放送していました。
返信削除全3回のシリーズで次回は1月23日(土)午後10時30分~11時「心理試験」、1月24日(日)午後11時20分~11時50分「屋根裏の散歩者」です。
明智小五郎は満島ひかりが演じていました。面白かった。
うおー、知らなかった。悔しい。次から見よう。予約した。女優が明智小五郎を演じるのは史上初じゃないのか。
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