1865年、新撰組が壬生から西本願寺へ移ったころの隊士募集考試の場面、土方(ビートたけし)と近藤(崔洋一)がふたりの応募者に注目するシーンから映画は始まる。見始めてすぐに、これ、司馬遼太郎の新撰組血風録だ!ってわかった。
まず驚いたのが松田龍平の美少年っぷりがすごい!とにかく初々しいし端正。薄ら笑いは妖艶。まるで写楽の役者絵みたいな質感、明治の錦絵そのまんまの風貌。隊士たちの心を乱していくのも、土方が「化け物め」と吐き捨てた事も納得させるキャストだ。
松田が結婚したとき職場の女子がかなりのショックを受けていたことを思い出したわ。この映画を見て松田龍平に恋に落ちた女子はいっぱいいただろうな。
見るのを途中で一旦中断して、司馬の「新撰組血風録」を引っ張り出して「前髪の惣三郎」を読み返した。
「眼が切れのながい単のまぶたで、凄いような色気がある。色が白く唇の形が美しい。」司馬の記述そのまんまだなって思った。
そして、あれ?これ、別のエピソードも合わさってね?
ダメ老人の井上源三郎(故坂上二郎)を見て若者が流派を訊くと「浄土真宗」だよ、と答えるシーン。沖田が「老人って、おい!井上さんはまだ40代だよ!切腹もんだよ!」ってつっこむシーン。肥後の脱藩浪人を討ち入るシーンに覚えがあった。あ、これは「三条磧乱刃」の井上と国枝大二郎のエピソードが合わさってまぜこぜになって、大島監督が「衆道」つまり「男色」をテーマに書いた脚本だ。面白可笑しく、やがて哀しき…という映画。脚本がかなり司馬の原作に忠実。
監察山崎蒸(トミーズ雅)も巻き込まれ困り顔。予想に反してなんだか笑えるシーンが多い。ちょっと軽薄なBL映画に見えた。そもそも浅野の喋りを聴くだけでw
心の声も聞かせる脚本、説明的ナレーションを字幕で示すサイレント映画風。しかもそのフォントが戦前昭和風。斬首のシーンも滑稽だった。
この映画で一番いただけないと思ったのがビートたけしの土方と、崔洋一の近藤。棒すぎる。
昔の人は動物性たんぱくとビタミンが不足してたから肌もすごく老けてたらしいので、見た目が30代に見えないのはまあ置いといても、「田代を加納に斬らせよう」と薄笑いを浮かべる近藤と、いろんなことが見えてる土方に、心の機微を表現できるような演技力は感じなかった。
それに沖田と近藤がそれを見届ける河原での幻想シーン。何これ?
沖田が「用がある」と中州に引き返すシーンがよく意味がわからなかった。ここ、原作読んでもよくわからない。
土方が桜の木をバッサリと切り倒すシーンをみて、なんともったいない!って思った。そんなことしちゃダメ、ゼッタイ!
期待してたより普通な映画だった。音楽の力は偉大だ。これが坂本教授の音楽じゃなかったら新春時代劇ドラマスペシャルになっていた。
でもやっぱり、松田龍平を世に見出したという点で偉大だ。
沖田の「用」は隊士を斬ることだと思います。
返信削除やっぱそれしか理由ないよなあ。
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