司馬遼太郎の新装版「戦雲の夢」(講談社文庫)を読んだ。この本は土佐22万石の大名・長曾我部盛親を主人公に関が原、大阪の陣を描いた小説。
自分にとって長曾我部ってまったく馴染んでない戦国武将。今まで見てきた大河ドラマでもまったく印象にない人物。
四国全土を制した長曾我部元親の四男・盛親を司馬は24歳の若者の青春から書き始めている。さすが司馬遼太郎だ。いろいろと面白すぎた。
土佐の家督を継いだ盛親、独りで家来・弥次兵衛の屋敷へ。「誰もいないのか。俺だ、あがるぞ」→「ざざーっと水の音」→「お、風呂場にいるのか」→「おう、俺だ。開けるぞ。ガラッ」→「風呂桶持った全裸の妹が呆然と立っている」→「兄・おこ」→「あー(ポリポリ)、めんどくさいから言い訳とかしないけど」
こんなシーン、マンガでしか見たことない。萌えイラストの挿絵とかあったら司馬遼太郎はさらに若者に読まれるんじゃないかな。鋭い人間観察眼による人物描写、人生哲学、そしてラブコメ。司馬は4人の美少女を登場させて恋と性愛を描いている。司馬の筆の技量に感心しかしない。
長曾我部盛親が土佐を失い、掛川の山内一豊が土佐を手に入れた差は、石田(長束)の守る水口ノ関を突破して家康と連絡を取れたか取れなかったかの差しかない。
あと、中央政界が激変する最悪な時期に元親が死に土佐の家督を継いだばかりで、他大名と面識もなかった。土佐の家臣たちが勇猛なだけで誰も中央政界のことがわからず的確なアドバイスがなかった……。
結果、西軍側に与してしまう。盛親は別にバカじゃなかった。関が原に布陣してみて毛利、吉川を見て「あら、なんかおかしい……」って気づいた。単独で長曾我部軍が家康に襲い掛かっていたら結果は全然違っていたかもしれなかった。
島津みたいに故郷に帰って徹底抗戦したらよかったのにって思う。恭順投降して京都所司代監視下の牢人生活へ。ここ、全体の3分の1ぐらい占めるけど、司馬の筆のおかげで飽きることがない。
大阪の陣も早々に「こりゃ負けだな」って気づく。武士としての死に場所が欲しかっただけだな。この人は運だけがなかった。
読んでるときに考えていた勝手な個人的キャスト 近衛倫子(プライドの高い貴族の娘)ほりき○まき、田鶴(唯一愛した少女)たけ○えみ、阿咲(所司代の諜者で悪女)まさみ、お里(最後の女)広○すず、でお願いしたい。
0 件のコメント:
コメントを投稿