2018年5月30日水曜日

綾辻行人「時計館の殺人」(1991)

綾辻行人「時計館の殺人」(1991)の1995年講談社文庫版を読んだ。

一回手に取ったのだが、この時代の日本のミステリーって面白いのかな?と逡巡しやっぱり棚に戻した。後日やっぱりまだそこにあったので連れ帰った。100円でゲット。
現在書店で手に入る新装版は上下巻に分かれている。こちらの旧判だと1冊にまとまっている。616ページにおよぶ大長編。

綾辻行人という作家の本を読むのは今回が初めてだった。結論から言ってとても自分に合っていた。新本格と聞いていたけどそうでなかった。ジャンル的にはサスペンスホラー。
文体と筆致が簡潔でわかりやすくてすらすら読める。衒学的な冗長さもまったくない。

鎌倉市今泉にあるといういわくありげな時計館。鋼鉄の二重扉とコンクリートに閉ざされ脱出不能に陥ったW大学ミステリーサークルの学生たちと、雑誌編集部の人々が次から次へと惨殺されて行く最悪なクローズドサークル型シリアルキラー!

アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」と「13日の金曜日」を足したような雰囲気のスプラッタホラー。
10年前の小学生時代、塾の合宿でこの洋館にやってきた過去。そこで出会った美少女と、なにか悲劇的事件があったような…という曖昧な記憶。一族の不審な連続死。

どうやら恐怖の逆恨み大量殺人らしい。外部に助けを求められないし、連絡も取れない!
こんな外部から隔絶されたような場所に丸腰で行くのはやめようと思ったw

殺害シーンでは犠牲者目線になって仮面と黒衣の謎の犯人と対峙するのがいい。読んでる側もその場にいるような臨場感。読んでいてとてもはらはらするし面白い。

この本の最大のトリックは実はアレがああなっていたというものだが、旧館に入るときに時計を没収され、外部と完全に遮断されている状況なので、なんとなく想像はついていた。アレがああなっている以上、アリバイがありそうでも実はアリバイになっていない。
だが、このアイデアは史上空前。よほどの変わり者大金持ちじゃないと実現不能。

最後はやっぱり「ルパン三世カリオストロの城」的フィナーレw 最近読んだ二階堂黎人「聖ウルスラ修道院の惨劇」に雰囲気が似ている。どちらもアニメでないと映像化は不可能かもしれない。

推理小説というよりはサービス満点のホラーの大作。高校生大学生ぐらいの人は楽しく読めるかと思う。読んでいて楽しかったので、今後、綾辻行人を探して読んでいこうかと思う。

2 件のコメント:

  1. 綾辻作品で一番びっくりしたのは「殺人鬼」。ただのスプラッター小説と見せかけて、世界にも例のない驚愕の結末でした。
    世評の高いのは「霧越邸殺人事件」とブロガーさんも映画で見た橋本愛「アナザー」の原作「Another」のようです。
    弁当箱のような「Another」もいいけれど、やっぱりデビュー作「十角館の殺人」が好きです。いかにもアマチュアっぽくミステリーマニアを喜ばせるような書き方をして、最後の1行で見事にうっちゃったところが素敵だった。

    綾辻「館」シリーズの一番のウィークポイントは他の作家に比較して探偵役が冴えないこと。逆にそれでも評価され続けているのは作品世界が独創的だからでしょう。
    以前、プレステに「YAKATA」という綾辻原作・原案・脚本・監修のゲームがあって、「十角館」「水車館」「迷路館」「人形館」「時計館」の原作世界をバーチャルで遊べるところが愉しかったです。

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  2. 「十角館」は多くの人がオススメしてるので探してるのですがまだ出会えてません。
    「霧越邸殺人事件」は以前見つけたのですが、その時お金に余裕がなくて断念。以後出会えてない…。
    「殺人鬼」はまったくノーマーク。今後探していこうかと。
    「Another」って化け物ホラーだった気がするけど、評判がいいなら読んでみようかな。

    島田探偵が庶民的で自分はわりと好きです。

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