2018年5月28日月曜日

アガサ・クリスティー「白昼の悪魔」(1941)

アガサ・クリスティー「白昼の悪魔」の鳴海四郎訳2003年早川書房クリスティー文庫で手に入れた。なかなかの人気作らしい。100円でゲット。
EVIL UNDER THE SUN by Agatha Christie 1941
これ、「地中海殺人事件」というタイトルで映画になってる。だが、原作はなんら地中海と関係がない。
レザーコム湾のスマグラーズ島に建つリゾートホテルが舞台。(この土地がほんとうに実在するのか調べてみたけどわからなかった。架空の地名かもしれない。)

子どもの頃に映画をなんとなく見た。ラストでポアロから名指しされた犯人がふてぶてしくホテルを後にしようとするシーンだけ覚えている。なのでなんとなく犯人が分かった状態で読み始めた。だが、内容はまったく覚えていない。たぶん映画と原作はだいぶ違っている。

島にバカンスでやってきた年の離れた夫婦の若く美貌の元女優妻が、もう1組の若い夫婦のハンサムな旦那を誘惑。周囲から悪魔のような女だと白い目で見られる。
そして砂浜で女優妻が首を絞められ殺されている…。
動機があるとすれば若夫婦のか弱い妻だが、体力的に無理だ。すると被害者の夫が怪しいかも…。

この作品の評価がとても高い。だが、クリスティ慣れしてきた自分は死体発見の場面から「たぶんあのパターンだな」と見抜いたw リンダの腕時計の件とアリバイの関係も。この男女には「ナイルに死す」も連想した。
なので自分としてはそれほど新鮮に感じられず平凡。したがって高評価というわけにもいかない。

それに、この作品は動機がかなりぼんやりしてるのが欠点だと思う。殺人というリスクを冒す意味がよくわからない。読後のもやもや感がひどい。

この早川版の訳が、自分の知ってる老紳士ポアロの口調とまったく違って調子が狂う。刑事との会話シーンも誰がポアロか注意しないとわからなくて困惑。上品さが感じられない。
それにインド帰りの大尉の話す言葉が「~ですわ」で、まるで「ナニワ金融道」でも読んでるような気分。その他のクリスティ作品はさすが英国人の会話は上品でエレガント!と感じさせる会話劇なのだが、この1冊だけは例外。

ラストでの真犯人の口上もまるで戦前の賊。調べてみたら鳴海四郎(大正6年生まれ)訳は1976年とそれほど古くもない。だが最後までず~っと言葉のセンスが自分と合わずイライラさせられたw 
ハヤカワが独占翻訳権を持ってるらしいけど、もうちょっとマシな新訳を出してほしい。

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