2018年3月2日金曜日

三島由紀夫「夏子の冒険」(昭和26年)

三島由紀夫「夏子の冒険」という本を見つけた。あれ?三島由紀夫にこんな本あったっけ?自分は新潮文庫にラインナップされている本しか三島を知らなかった。100円だったのでカゴに入れた。自分が手に入れたものは昭和35年版角川文庫の昭和62年第46刷。

世間知らずワガママ娘の夏子(20歳・処女)は、芸術家の若者、大学の助手、御曹司、誰にも情熱を感じず満足できない。退屈なあまり「私、修道院に入る」と言い出す。

函館のトラピスト修道院に入るべく、母、伯母、祖母の三人に付き添われて北海道へゆく途中、猟銃を背負った「目の輝きが違う」という若い男・井田毅に目を奪われる。青函連絡船で名乗りあって函館で再会。

聞けば男は、かつての恋人の仇である人食い熊を狩るために、仕事を休んで北海道へ来ていた。
「やっぱ修道院に入るのやめるわ」「熊狩りに連れてって」、母たちが温泉につかっている間に函館の宿を脱出。このへんの展開が予想外すぎるドタバタ喜劇。

人食い熊?アイヌのコタン集落?熊を探して北海道を大移動?

この文庫本は巻末に解説がまったくなく、いったいいつごろ書かれたものなのかわからない。戦後の米軍占領下なことはわかった。千歳の街にも米兵相手のパンパンが道に立って客を引いている。調べてみると、この作品は昭和26年(1951)に週刊朝日に連載されたもの。サンフランシスコ条約で日本がやっと独立した年だな。

この時代のコタン(アイヌ集落)の記述がとても興味深い。今までまったく自分はコタンについて見聞きしたことがない。教科書でも学んでいない。
アイヌは非衛生的な家屋に住むことが禁じられて都営住宅のような家に住んでいると書かれている。アイヌの老人には結核が多いとも書かれている。そのへんのことは初耳。ヒロインがアイヌの夫人の顔に入れ墨があって驚くシーンもある。

頭がいいのか天然なのか?クールでドライで自分勝手な信念を持っている夏子が可笑しい。。読んでいてツッコミまくり。すごく楽しい。映画のように活き活きとイメージで来た。実際に映画化もされている。

この物語のもう一組の主人公はヒロインの母、伯母、祖母の呆れたおしゃべり有閑マダム3人。行く先々でちょっとした騒動。

三島由紀夫というと「潮騒」「金閣寺」「仮面の告白」とか有名だけど、中高生に読ませるべきなのはこの「夏子の冒険」だと思う。10代の子でも楽しく読めると思う。ラストも良い。
自分、ヒロインを齋藤飛鳥で脳内再生してた。てか飛鳥に読ませたい。

ちなみに自分の考えたキャスト、夏子(齋藤飛鳥)、秋子(佐々木琴子)、不二子(寺田蘭世)で脳内再生。誰かこれを映画化ドラマ化を企画してくれないか?

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