2017年8月9日水曜日

紀田順一郎「古本屋探偵の事件簿」(1991)

こんな本を見つけた。紀田順一郎「古本屋探偵の事件簿」(創元推理文庫 1991)。
2013年の第20刷。ほとんど読まれた跡のないとてもキレイな一冊。108円でゲット。661ページの大ボリューム。

紀田順一郎という名前はなんとなく聞いたことがある程度。今回初めて読む。
1982年から84年までに書かれた推理小説を1冊にまとめて文庫本化したもの。神保町が舞台になっているということで興味を持った。

あと、「ビブリア古書堂の事件手帖」の作者に影響を与えた本らしい。古書店主が謎を解く。なるほど、雰囲気が似ていると感じられた。古書入札の現場でつかみあいのケンカとかw

古書業界って本当にこんな山師みたいな世界なのか?稀覯本をめぐる古書店主とマニアたちの醜いギスギスした駆け引きや争いが描かれているので、読んでいて楽しいことも爽快感もない。古書マニアの執念はこれほどまでのものなのか?
100円の本しか買わない自分からすると信じられない。そこに書かれている内容のみが重要。初版本にこだわるとか考えられない。

神保町に活気があったのは80年代前半までだったのか。今の神保町古書店街は部外者の自分ですらも寂れっぷりが心配になるレベル。そんなことを想いつつ読書開始。

1本目は「殺意の収集」
何の知識も持たずに読んでいてなんとなく昭和のころの話なんだなと気づく。古書業界内部の話なので部外者は置いていかれるw 
「ワットオの薄暮」という本が本当に存在するのか?登場人物たちとは別の次元でモヤモヤしたので調べてみると、作者創作の架空の稀覯本だったっぽい。やっぱりか!

レアすぎる本なので図書館に寄託したのだが、所有者が主人公を誘って見に行ってみると中身がすり替えられていた!という事件。
閲覧者を調べれば犯人がわかるんじゃね?と思いきや、図書館は閲覧者を部外者には教えてくれないw 主人公・須藤康平がキッチリカッチリ論理で謎を解く。アリバイも崩す。

うーん、そこそこ面白い。1本目なのでこれが基準となる。次を読み進める。

だが、2本目の「書鬼」は横溝正史みたいな入り組んだ人間関係が、自分は途中でよくわからなくなったw 

3本目の「無用の人」は愛書家という人々の浅ましさ。「ビブリア」の佐野史郎みたいな性格の悪い店主ってフツーなのか。
主人公古書店主が立ち読み客にイライラする箇所を読んで、市川準監督の「東京兄妹」で緒形直人が客に「イイカゲンニシロヨ」と悪態をつくシーンの意味がわかったわ。

最後の「夜の蔵書家」が本の半分を占める最大長編。昭和20年代に失踪したエロ本艶本発禁本出版にかかわった人物の捜索。これが登場人物が膨大過ぎて途中で何が何だか…w 老人たちに話を聴きにいくので、まるで下山事件だし。
希少であればエロ本でさえコレクションの対象になるってことが驚き。

すっごい力作だが、最後まで集中力が続かなかった。馴染みのない世界すぎた。あんまり自分に合ってなかった。オタクは怖いという教訓を与えてくれる1冊。

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